私の夜の日課である、短距離走中に悲劇は起きた。
それは、普段と変わらない梅雨も終わりを迎えたある日の夜。
私はいつも通り、ペンとノートそしてストップウォッチを片手にお気に入りの橋へ向かった。
軽い準備体操をし、体の節々に違和感がないかを自らの体に問いかけながら入念にこれから始まる短距離走の準備を行った。前日の30Mダッシュでは感覚が良かったので、今日は少し出力を上げた状態で40Mを数本走る予定だった。橋の上にある街灯が向かいから来る部活帰りの高校生を照らしつけ、私も若い奴には負けじと体と心の準備をするのである。
橋の上に人もいなくなり、舞台は整った。後は、無限に続いているかの如く立ちはだかる街灯を横目に全速力で夜の心地よい風を切って走るのみ。
1本目、体調は至って良し。それなりに思い通りの走りができた。
2本目、左手に強く握りしめられたストップウォッチのタイムが1本目に比べいくらか早くなり、心の中で小さくガッツポーズと同時に3本目をどうやって走るかを思考する。
3本目、スタートに立つ。脳の中で完成された理想の走りを思いながら、私の目線は橋のはるか彼方、まるで空を自由に飛び回る猛禽類の如くゴールに向けて一直線。イメージは最高潮に。いざスタート。1歩、2歩とヨチヨチ歩きの赤ん坊の如く一歩ずつ大地を噛み締めながら全速力で走る。ちょうど6歩目を踏んだ頃だろう、スピードも乗ってこれからだというときに悲劇は起きた。そう、左足のハムストリングに突如違和感が走った、だがスピードに乗っている私の体は急には止まれない。ほぼ右足けんけんのような形でゴールを迎えた、その場で倒れこみ痛みに耐えようとするも、時間が経つのを待つしかないような痛み。倒れ込んだ私の左手にあるストップウォッチは無情にも時を刻み続けていた。
当分の間、走ることは愚か歩くことさえも困難な体へとなってしまった。なんとも情けない気持ちである。しかし、めげていても仕方ない、起きてしまったからには、1日も早く走れるように治療に全力を掛けよう。
最後まで読んで頂いた方、大変ありがとうございました。
明日以降は肉離れを全力で治す過程を描いていこうと思いますので、どうぞよろしくお願いします!